フクシマのメルトダウンはどんな影響を及ぼすのか? チェルノブイリとフクシマの比較

2011年6月6日

2011年4月12日、日本政府は福島第一原発の事故の国際評価尺度を最も高いレベル7に引き上げると発表した。フクシマ以前のレベル7は4月26日で25周年を迎える1986年のチェルノブイリ原発事故のみである。複数の原子炉が損傷するという史上初の大災害が発生した3月11日から2カ月半が経過した現在も、東京電力と政府は福島第一原発の制御に苦戦を強いられている。現状をみると途方もなく楽観的としか思えないのだが、東電は半年から9カ月で問題を解決できるとの予測を打ちだしており、また、浜岡原発など危険性の非常に高い原発を閉鎖する計画も発表された。

事故の評価をレベル7に引き上げた後、日本の首相官邸は福島とチェルノブイリを比較した声明を出した。 (原文)

日本政府の主張では、チェルノブイリ原発事故によって汚染された牛乳を飲用し、甲状腺ガンにかかった小児は例外として、チェルノブイリ事故の放射線によって健康被害を受けた一般人はいない、ということである。それは事実なのか。小児の甲状腺ガンについて日本政府は警戒しているが、原発の事故処理で高い放射線を浴びている人びとを除いて、福島の事故で影響を受ける人はいないと何を根拠にそう言えるのか。(原文)

4月15日、日本の大手通信社である共同通信社はロシアの科学者アレクセイ・V・ヤブロコフの英文手記を掲載した(原文)。 低線量被曝であろうとも脅威であるとのヤブロコフの厳しい警告は大手メディアには無視されたが、西日本新聞は日本語で掲載した。(原文)

共同通信社の英語版は、ヤブロコフの膨大なチェルノブイリの調査をもとにフクシマの危機を次々に明らかにしている。「福島原発事故による被害を過小評価」という見出しでヤブロコフは次のように述べている。

「福島第一原発の事故による放射線の土壌汚染がもたらす健康被害を分析すると、今後50年間で、同原発から半径200km圏内では約40万人のガン患者が増加する可能性がある。この分析は日本の文部科学省の公式データをもとにクリス・バズビー教授(欧州放射線リスク委員会)が行ったものである。」

事故の影響を最小限にとどめるための手立てをとるかどうかによって、この数字は低くも、高くもなる。国民にとっても国にとっても、過小評価することは過大評価するより危険である。

チェルノブイリでの経験を基に、ヤブロコフは次のことを提言する。

1.立ち入り禁止区域を[現在の20kmから]少なくとも原発から半径50km圏まで拡大する。

2.食料からの追加的な汚染を避けると同時に、個人の健康を守る有効な方法について細かい指示を提供する。個人線量計を使って全員を少なくとも週に一度、定期的に測定する体制を作る(放射性核種の全てについて)。放射線防護剤や除染剤(身体を有害な放射線から守る物質)を配布する・・・

3.汚染地域の安全な農業について積極的に助言する。例えば牛乳の再処理、食肉の汚染除去、工業用栽培への転換(バイオ燃料など)。このような「放射性核種対抗性」農業はコストがかかるので(在来の農業に比べて30~40パーセントコスト高の可能性がある)、補助金を出す必要がある。

4.緊急に既存の医療センターを改良し、可能であれば新規に医療センターを設置する必要がある。被曝した人びとの急性および長期的な健康への影響に対処するためである(染色体分析に基づく遺伝子医療など)。

5.(チェルノブイリを教訓として)福島原発事故収束後、汚染地域での生活を支援する最も有効な方法として、政府省庁と連携した特別で強力な政府組織(省または委員会)を設立し、もっとも複雑な作業を必要とする最初の数年間、汚染地域の諸問題に対処すること。

ヤブロコフは、2006年のグリーンピース報告書「チェルノブイリ原発事故:健康被害の結果」と2010年の広範囲にわたる追跡調査「チェルノブイリ:その惨事が人と環境に与えた影響」の中心的な著者の一人である。後者はニューヨーク科学アカデミーにより出版され、1986年の事故によって98万5000人が死亡する可能性があるとという驚くべき内容であった。

この主張は衝撃的であった。というのも国際原子力機関(IAEA)や世界保健機関(WHO)、国連開発計画による600ページに及ぶ2005年報告書と著しく異なっているからである。IAEA等報告書では約50人が直接チェルノブイリ事故で死亡し、事故に関連して将来ガンになるのは4000人弱とされている。二つの報告書は広く論争を巻き起こしたまま決着がつきそうもない。1986年のチェルノブイリ原発事故の検証は科学界および政治の世界でも異なる評価をめぐって白熱した論争を繰り広げている。福島原発事故から数カ月が経過したが、多くの報告がIAEA/WHOの結果あるいはニューヨーク科学アカデミーから出版されたヤブロコフの調査研究を受け売りするのみで、真剣に相反する結論を検討したり議論を重ねることがない。見解は異なるものの重要と思われる研究結果をいくつか紹介する。福島原発事故から想定される結果を明らかにする手助けになるであろう。(1、2)

ヤブロコフと同僚は、チェルノブイリ原発事故の影響を受けた地域や人びとについての、ロシア語その他東欧諸国語で発表された数千にのぼる調査報告を検討した。これらの研究は英語圏の科学界からは無視されたと彼らは述べている。

英国の科学ジャーナリスト、ジョージ・モンビオをはじめとする批評家は、チェルノブイリ事故の影響を受けた地域で発生したガンの増加を、事故による放射能汚染によるものとしている点についてヤブロコフのグループを批判した。ガン罹患率に影響する要因は数々あることを強調して、モンビオは、例えばチェルノブイリの放射線に最も強く晒された地域で1986年から2000年の間に劇的にガンの増加がみられた地域はない、日本と変わらないと述べている。日本が受けたチェルノブイリの影響は取るに足りないが、日本のガン罹患率は事故以来ほぼ2倍である。福島原発事故のあと、多くの人びとが脱原発に傾いたとき、モンビオは、グリーンエネルギー政策の中心的要素として原発を導入することを彼はこれまで批判してきたが、それを取り下げると発表した。

日本政府の統計によるとこの期間には、ガン検診率が大幅に増加しており、これが増加を説明する理由の一つであると考えられる。(1、2、3、4)

バーミンガム大学天体・物理学科のモンティー・チャールズは、『Radiation Protection Dosimetry』(第141巻第1号、2010年、pp.101-104)にてヤブロコフの研究を検証し、統計の結果がかなり曖昧であり、矛盾さえ見られるとしている:

様々な情報源から多くの事実や数値を示しているが、説明や批判的評価はほとんどない。特定の情報源を参照している、相互に関連しているらしい表や数字 、記述には、相互の不一致が見られる。腫瘍学(ガン)の章に最も私は興味を持った。その章の概略は、ヨウ素131とセシウム137の被曝量を基本とし、高汚染地区と低汚染地区のガン死亡率の比較、チェルノブイリ原発事故前と後のガン罹患率について記したものである。ヨーロッパの放射線によるガン死亡者は21万2000から24万5000人、それ以外の世界では1万9000人と予測されている。しかし、この数字を裏付ける特定の検討内容をどこにも見つけることはできなかった。そして、その章はMalkoの研究を裏付として終わっている。Malkoは、1万~4万人が甲状腺ガンで、4~12万人がその他悪性腫瘍によって、5千~1万4千人が白血病によって、累計5万5千~17万4千人がベラルーシ、ウクライナ、ロシアを含むヨーロッパ全体で追加的に死亡すると推定している。これらの数値は同じ著者の表(6.21)と一致しないからますます混乱してしまう。全体の死亡者について最終章の表(7.11)には、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの高度汚染地区の死亡者21万2千人の追加的推定値が記されている。この数字は1990~2004年のもので、汚染地域の全死亡者の3.8~4.0パーセントがチェルノブイリ事故によるものとの前提に基づいている。こうした数字の多くをどう解釈するかはわからないし、どれを採用すればよいのかもわからない。

ヤブロコフの研究が厳しい批判の対象になっている一方で、ヤブロコフ自身が前出のWHO/IAEAの調査結果について批判している。ヤブロコフの研究は報告書「チェルノブイリ事故の健康被害:原子炉事故25年」の主要部分を占めている。この調査報告書は、2011年4月8~10日、ベルリンにて開催された核戦争防止国際医師会議による世界会議に際し、ドイツ支部により発表されたものである。(原文)

報告書はWHOとIAEAによるチェルノブイリ事故による死者数を低く推定しているとして下記のように厳しく批判している:

WHOとIAEAが発表した公式データが信頼性を欠いていることへの覚書

国際原子力機関(IAEA)と世界保健機関(WHO)は2005年9月に開催された「国連チェルノブイリ・フォーラム」にて、チェルノブイリ事故の影響について調査研究結果を発表したが、甚だしい矛盾を含んでいた。例えば、WHOとIAEAのプレスリリースは、高度汚染地域の人びとのうちガンや白血病により死亡すると推定されるのは、せいぜい4000人と述べている。しかし、根拠とされているWHOの報告では、実際の死者数は8930人である。こうした死亡者についてはどの新聞記事も言及していない。WHOの報告に引用された資料を検証してみると、ガンと白血病による死亡者は1万~2万5千人の追加となることが判明した。

したがって、IAEAやWHOの公式発表は、自らのデータをごまかしていると結論することが妥当である。IAEAやWHOのチェルノブイリ事故の影響についての発表は、ほとんど真実を伝えていないのである。

報告書はさらに次のように述べる:

2005年の時点で既に、S.Pflugbeil 氏は、プレスリリースとWHO報告書、そして引用された情報源(Cardis et al.)との間に食いちがいがあると指摘している。今に至っても、チェルノブイリ・フォーラムやIAEA、WHOは、自らの分析に基づけば、ガンや白血病による死者は自分たちが公表している数字よりも2倍から5倍多いものになることが予測されていることを人びとに知らせることは必要ないと思っているようである。

それから約5年たった2011年になっても、国連のどの公的機関もこれらの数字を訂正していない。チェルノブイリの健康被害について、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会UNSCEAR」 の最新の発表でも、被害を受けた3カ国における事故の影響について出された数多くの結果をまったく考慮していない。最近メディアに伝えられたのはたった一つの数字----6000件の小児と児童の甲状腺ガンとリクビダートル(原発事故処理作業員)の白血病と白内障----だけである。こうして、2011年、UNSCEAR委員会は、次のように発表することになる。すなわち、この20年間の調査とそれ以前の当機関の調査に基づき、チェルノブイリ事故による深刻な健康被害が人口の大多数に発生すると懸念する理由はないとの結論に至った。例外は、幼少時に放射線に晒された人びとと、高い放射線被曝量に晒されたり危険を誘発する高い放射線の処理をしなければならなかったリクビダートル[原発事故処理作業員]である。

チェルノブイリ事故による死者数に関するヤブロコフの推定値は高すぎるかもしれないが、WHOとIAEAの数値は間違いなく低すぎる。

チェルノブイリ事故の「リクビダートル」 の運命については議論が続いている。福島とチェルノブイリの大きな違いは事故後の政府の対応である。日本政府が避難勧告のもたつきや、避難区域を同心円に限定したことを非難されるのも仕方ないが、事故の深刻さを即座に認識し、破壊された原発から人びとを遠くへ避難させる努力はした。チェルノブイリの場合は、事故の情報を国家が抑え込み、60万から100万人の「リクビダートル」がメルトダウンの被害を封じ込めるために、危険を知らされないまま非常に高い放射線の区域に乏しい放射線防護装備だけで送り込まれた。

『British Journal of Radiology』(70号、1997年、pp.937-941)に掲載された論文「チェルノブイリ原発事故の『リクビダートル』に発生した甲状腺ガン」のように、健康被害は比較的限られているとする調査もある(追跡調査された15万人余りのリクビダートルのグループで甲状腺ガン発生は50件以下)。(原文)

国際放射線防護学会(IRPA)によって発表された論文「チェルノブイリのリクビダートル:人びとと被曝線量」もまたリクビダートルの大多数に関して「事故処理による放射線被曝量の健康被害は非常に少なく、いかなる疫学上の被害も確認できない。だが、高い被曝が考えられる特定の下請グループについての疫学調査は行っていない。」と結論している。(原文)

しかしながら、リクビダートルの支援グループは、2万5千人が死亡、7万人以上が身体障害者となったと主張している。(原文)

この問題は死亡に限定すべきではない。核戦争防止国際医師会議ドイツ支部による報告書「チェルノブイリの健康被害」はリクビダートルの広範囲にわたる重大な身体障害の症例を紹介している。チェルノブイリ事故の死者数と同様、リクビダートルの被害状況は、発表者によって被害の規模がまったく異なっており、論争の的となっている問題である。

チェルノブイリの健康と死亡の結果に関して行き詰まっている現状を打開するようなデータを示す専門家もいる。放射線専門医であり、オーストラリア放射線保護・核安全局放射線健康委員会の代表であるピーター・カラモスコスは「チェルノブイリ原発事故による死者数の真相は?」のなかで、その数は不確定であるが、「科学的な見地から、それ以下だと放射線のリスクはないという閾値などなく、リスクは被曝量に比例するという『線形・閾値なし(LNT)モデル』を重視する」と述べている。[訳注:LNTモデルとは放射線量と健康被害(発がん率など)との関係は線形で閾値はないとする説]

米国科学アカデミー放射線生物学的影響委員会(BEIR)の2006年レポートを参考にして、カラモスコスは次のように指摘する。「低レベルの放射線は無害だという見解は一部の科学者が唱えているにすぎない。彼らの意見は原子力産業界で重宝されているにすぎない(温室効果ガスを排出する企業が懐疑主義の気候学者の意見を誇張するのとまったく同じだ)。」

カラモスコスはさらに、次のように述べる:

チェルノブイリ事故直後の死亡者は約50人というのが一般的な見解である。それ以外にチェルノブイリの放射性降下物に晒された人びとにガンの発生数がかなり増えることを指摘する研究はない。これまで述べてきたようにデータのずれや方法論の問題があるために、誰も研究の結果そのような知見が得られることを期待していない。また数百万人もの人びとが晒されたチェルノブイリの降下物による被曝量が非常に低かったことも関係している。一部の周辺的科学者や原子力産業の熱弁家にとって、これで一件落着である。つまり統計的な証拠は乏しく、チェルノブイリ事故による死亡者はたった50人。これで終止符である。主流の科学を選ぶ私達は、放射線被曝の推定値に標準的リスクの推定値を乗じて、科学的に妥当な値の死亡者数を得ることができる。IAEAはチェルノブイリ放射性降下物の50年間の全積算量を60万シーベルトと見積もっている。国際放射線防護委員会の標準的リスク推定値は1シーベルトあたり0.05人の致死的ガンの発生である。これらの数字から推定3万人が致死的ガンになる。多くの研究がこの積算被曝量とリスク推定値に基づいた方式により影響を算出し、死亡者数を9000人(旧ソ連時代の最も汚染された地域の)から9万3000人(ヨーロッパ全体)という数値を提示している。これらの数値はチェルノブイリ事故によって起こりうる信頼にたる死亡者数である。死者はたった50人とする主張は原子力業界や一部の執拗で科学的に無知な支持者によるいい加減で都合のよい解釈として拒絶されるべきである。

次に、カラマスコスはフクシマについて次のように述べる:

原子力業界の熱弁家は、フクシマの低レベルの放射線被曝による危険性はないと主張するであろう。外部の我々が、死亡者数の推定値の基準となるもっともらしい放射線被曝量を手にするまでに数カ月あるいは数年かかるであろう。現在まで福島第一原発からの放射線放出量はチェルノブイリ事故の総量の10パーセントと日本政府は見積もっている。低レベルの放射線は無害であるという見解は、日本の現状----福島第一原発の周囲20キロメートルの避難地域や日本各地の食料と水の消費にまつわる制約、日本からの食料の輸入制限----とは全く相いれないものであることは言うまでもない。(原文)

日本政府は、福島第一原発からの放射線放出に対処するにあたって、ヤブロコフによるチェルノブイリ調査研究や、広域避難が考慮されない場合に福島付近の放射線に関連したガンの追加的発生が40万人に上るという厳しい予測を、慎重に検討し議論すべきである。特にピーター・カラモスコスが提唱する「線形・閾値なしモデル」などの代替的な方法論も同様である。20キロ避難地区の範囲外の高度汚染地区から住民を新たに避難させる手立てを講じている一方、日本政府は同時に、福島県の学校での毎時被曝量の許容量を毎時3.8マイクロシーベルトに引き上げた。毎日新聞は「国際的に認められている年間最大20ミリシーベルトを生徒が吸収することになるレベル」と述べている。“ Save the Children : Radiation Exposure of Fukushima Students ,” link を参照のこと

そのような被曝量にはどのような危険性があるのか?小児放射線医学協会のトーマス・L・スロヴィスは『Periatr Radiol』(2002年32号、pp.225-227)に次のように述べている。

「・・・放射線によるガンのリスクは1シーベルトあたり5パーセントである・・・ これは平均的な数字であり、平均値はほとんど意味をなさない。大人の場合、中年期後半の個人ならば、1シーベルトあたり1パーセントである。しかし小児の場合、15パーセントと考えられ、幼ければ明らかに性差もある。大人に比べて子供は非常に影響を受けやすい。」大人の場合、緊急作業員の作業にまつわる許容リスクは50ミリシーベルトである。子供にとって、同等のリスクは(50ミリシーベルト/250ミリシーベルト)*66ミリシーベルト=13ミリシーベルトである。日本政府が提示している子供の基準値はこの値の2倍である。基準値の20ミリシーベルトへの変更は人生の後期でのガンリスクを0.3パーセント追加することになる。

さらに、デビッド・J・ブレナーは、『Nature』4月5日号で、低レベルの放射線の長期にわたる健康被害について正確なことはわかっていないことを強調している。(原文)

ここ数週間、原発のメルトダウンについての日本政府の対応が問題とされているなか、放射線と福島の30万人の子供たちの問題が議論の中心となってきている。ちょうど時を同じくして、福島第一原発事故の初動時に起きた多重の事変を即時に公表しなかったことが東電によって明らかになり、今なお制御不能の事態であることから、放射線問題は一層深刻度を増してきている。

4月28日、東京大学の放射線専門家、小佐古敏荘は内閣官房参与を辞任した。小佐古は、2003年の原爆症認定集団訴訟で被爆者の主張を否定する側の証人として以前から悪評高い人物であった。しかし、福島第一原発事故の後、小佐古は、政府が長期被曝の健康被害を余りにも軽くとらえているとして、切々とした勇気ある抗議の姿勢を見せたのである。記者会見で小佐古は、福島の子供たちの放射線被曝量の基準値を引き上げた菅政権を次のように非難した:

緊急時には様々な特例を設けざるを得ないし、そうすることができるわけですが、それにも国際的な常識があります。それを行政側の都合だけで国際的にも非常識な数値で強引に決めて行くのはよろしくないし、そのような決定は国際的にも非難されることになります。

今回、福島県の小学校等の校庭利用の線量基準が「年間20ミリシーベルト」を基礎として導出された「毎時3.8マイクロシーベルト」に決定された。これらの学校では、通常の授業を行おうとしているわけで、通常の放射線防護基準にちかいもの(年間1ミリシーベルト、特殊な例でも年間5ミリシーベルト)で運用すべきで、警戒期ではあるにしても、緊急時(2、3日あるいはせいぜい1、2週間くらい)に運用すべき数値をこの時期に使用するのは、まったくの間違いであります。警戒期であることを周知の上で、特別な措置をとれば、数カ月間は最大、年間10ミリシーベルトの使用も不可能ではありませんが、通常は避けるべきと考えます。年間20ミリシーベルト近い被曝をする人は原子力発電所の放射線業務従事者(約8万4000人)でも、極めて少ないのです。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは、学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受入れがたいものです。

年間10ミリシーベルトの数値も、ウラン鉱山の残土処分場の中の覆土上でもなかなかみることのできない数値で(せいぜい年間数ミリシーベルトです)、この数値の使用は慎重であるべきであります。小学校の校庭の利用基準に対して、この年間20ミリシーベルトの数値の使用には強く抗議するとともに、再度の見直しを求めます。

(Tanaka Izumi 訳)全文の英訳は「こちら」から可能。

4月29日、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)は、放射線被害について広く受け入れられている科学的理論を引用して、福島県の生徒が晒される危険性を日本政府が認めるように抗議した。

米国科学アカデミーのBEIR VII レポートは次のように推定している。放射線1ミリシーベルトによって、1万人に約1人固形ガン(白血病以外のガン)のリスク増加、10万人に約1人白血病のリスク増加、1万7500人に1人ガンによる死亡のリスク増加がある。しかし重要な点は、誰もが同じレベルのリスクを受けるわけではないことである。幼児は(1歳以下)放射線によるガンのリスクは大人の3、4倍であり、男児より女児のほうが2倍感受性が高い。

本文はインターネット上にて可能。

5月12日、日本医師会は小佐古の辞任に続いて、福島県の児童の放射線被曝に対する政府の無関心ぶりを非難した。(原文)

毎日新聞もまた様々な立場からの抗議を報じた。

これに関連した報道は政治批判とは縁のない出版界にも広がりを見せた。パレスチナの惨劇や731部隊、チェルノブイリの報道で知られているジャーナリストの広河隆一は、『女性セブン』(女性週刊誌)5月26日号に20ミリシーベルト問題について記事を寄せた。この週刊誌は有名人を追いかけまわすタイプのものだが、今では子供に対して政府の決定した20ミリシーベルトの意味を全国の母親たちが憂慮していることから、政治批判を一段と強めた。(原文)

ソ連政府は当初のチェルノブイリ放射線放出に対して初動は無責任であったかもしれないが、危険ゾーンから120km離れたキエフの子供たちを5月から9月までの間に懸命に避難させた、と広河は述べている。福島市は福島第一原発からわずか50kmである。現在20ミリシーベルトと認可されて、日本の子供たちは1986年のウクライナの子供の4倍の放射線に晒される可能性がある、と広河は指摘する。さらに、「・・・毎時3.8マイクロシーベルトという数字は死の街となったプリピャチの数値とほぼ同じである。私はこの荒涼としたプリピャチの廃墟の中に、日本の子供たちが走り回る姿など想像したくもない。」 もともとチェルノブイリ原発の作業員のために建設されたプリピャチは、今では「立ち入り制限区域」に指定されたウクライナの象徴的な「ゴーストタウン」である。

チェルノブイリとフクシマには類似点がたくさんあるが、明らかな相違を指摘する人も多い。マンチェスター大学ダルトン原子力研究所のリチャード・ウェイクフォード教授は、『Journal of Radiological Protection』最新号にて国際原子力事象評価尺度(INES)の欠陥を指摘している。「レベル7はINESで最高のレベルなのでフクシマとチェルノブイリの事故の差異がない。従ってフクシマの事故は『もう一つのチェルノブイリ』と言われる。だが、そうではない・・・」4月現在フクシマについてはチェルノブイリ原発事故で排出された放射線量の10分の1に過ぎないと彼は断言し、日本政府の公式の答弁を評価している。

「福島第一原発事故をかかえた福島県にまつわる困難な状況を考えると、避難や監視、人びとの保護について官公庁の組織的な対応能力は評価できる。特に、最悪の状況で戦っている緊急作業員の英雄的な努力は尊敬と称賛に値する。私は個人として彼らの勇気には脱帽する。」(原文)


 

チェルノブイリとフクシマの原発事故の処理に重大な相違があることは私たちも指摘している。しかし、ウェイクフォードの評価は、東電や日本政府の隠蔽や無謀さという最も重要な実態を見過ごしていることを指摘せねばならない。特に、福島県の子供たちを長期にわたって20ミリシーベルトの放射線に晒す決定がそうだ。

チェルノブイリと比較したフクシマの危険性について依然として様々な主張がなされる中、福島県の小学生の放射線被曝という重要な問題が議論の中心となっていることにかわりはない。日本の子供たちに長期にわたって危険性を与えかねない政策に対する批判に対して、日本政府はまだきちんと応答していない。

マシュー・ペニーは、モントリオールのコンコルディア大学助教授でありジャパン・フォーカスのアソシエイト。現在、戦争に対する日本国民の心象について研究している。ペニーとの連絡は penneym@hotmail.com

マーク・セルデンは、アジア・パシフィック・ジャーナルのコーディネーターであり、コーネル大学東アジア・プログラムの上席研究員である。最近の著作は、『中国社会:変化、闘争、抵抗』、『中国、東アジアとグローバル経済:地域的、歴史的展望』、『東アジアの復興:50年、150年、500年後の展望』、『戦争と国家テロリズム:長い20世紀における米国、日本、アジア太平洋地域』[日本語タイトル:全て仮訳]
セルデンのホームページは www.markselden.info

引用表記:Recommended citation : Matthew Penney and Mark Selden , What Price the Fukushima Meltdown? Comparing Chernobyl and Fukushima , The Asia-Pacific Journal Vol 9 , Issue 21 No 3 , May 23 , 2011 .

2011-07-07 12:23:48 / ozawa
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[ 原文 ] http://www.zcommunications.org/what-price-the-fukushima-meltdown-comparing-chernobyl-and-fukushima-by-mark-selden
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