UNSCEAR報告2010年(9~10ページ)

法律: 健康/医療 UNSCEAR 国連 放射線 チェルノブイリ

2. 生体機構に関する研究

27. 放射線被曝後の発癌の機序がわかれば、疫学データの解釈にも有益である。とりわけ、低線量及び低線量率におけるリスクを推定するために予測を下方に投影するために有用である。2000年以来、委員会(UNSCEAR)は、この領域の研究の展開を検討することにより大きな力を注いできた。

28. 長年にわたる発癌の研究から、一般に、発癌のプロセスは、体器官における一つの「幹様」細胞のDNAで一つないし複数の遺伝子が変化すること(突然変異)により始まるという証拠が蓄積されてきた。それ以後の癌の進展と悪性腫瘍の始まりは、多段階で進むと考えられ、それらの段階もまた、突然変異をはじめとする細胞遺伝子に関わる変化に関連している。

29. 委員会は、こうした研究の知見をレビューするとともに、放射線被曝が細胞及び亜細胞に及ぼす効果に関する多くの研究をレビューした。現在の知見によると、放射線を照射されたのちに細胞内にとどまるエネルギーはあらゆる細胞成分に損害を与える可能性がある。放射線に関連する細胞の変化における主要な細胞下標的は、染色体にあるDNA分子である。DNAは各細胞の全機能を調整する約2万5000の遺伝子をコード化しており、遺伝子(あるいは遺伝子群)に影響を与える放射線の損傷が正しく修復されなければ、細胞は死ぬかもしれない。あるいは、細胞は生き延びるが、DNAの変異により、細胞行動が影響を受けるかもしれない。そのような突然変異がわずかに起こっても、癌の発生につながる可能性がある。細胞には、自然にあるいは外部的な要因で起きた様々な形態のDNA損傷を修復する複数のDNA修復系が備わっている。大まかに言うと、DNA修復系は、細胞の遺伝的完全性を復元する役割を持っている。重要なのは、発癌において鍵となる突然変異事象は、しばしば、照射を受けた細胞がある器官に依存し、二つのカテゴリーに属する----単一遺伝子の特定の小さな突然変異、そして、DNAの喪失を伴う突然変異(複数の遺伝子に及ぶこともある)、である。

30. 放射線が細胞DNAに損傷を与えるメカニズムや、損傷を認識し修復するために機能する細胞機構、そして放射線に起因するDNAの突然変異の発生に関する高度な研究から、発癌の機序については新たな知見が得られている。放射線は、DNA二重らせんの鎖を二本とも同時に損傷する可能性があり、それはしばしばDNA分子の破壊とそれに伴う複雑な化学変化をもたらす。

31. DNAに対するこのような複雑な損傷は正しく修復することが困難であり、低線量の放射線であっても、発癌のリスクを上昇させるようなDNAの突然変異が発生する確率はとても小さいがゼロではないというのがあり得べき状況である。したがって、現在、手に入る証拠は、低線量及び低線量率において癌を誘発する変異要素については反応にしきい値がないことを支持する傾向に傾いている。放射線に関わる変異の性質に関する情報は、DNA損失事象(遺伝子欠失)がこの変異要素において支配的である傾向があることを示している。また、高線量及び高線量率における発癌リスクの低減と比較して、低線量及び低線量率における発癌リスクの低減は、少なくとも部分的には、放射線被曝後のDNA損傷に対処する細胞能力と関係しているという証拠も一部にある。線量・線量率効果係数(DDREF)と呼ばれる修正要因が、低線量及び低線量率におけるの相対的減少を考慮するために用いられることがしばしばある。しかしながら、委員会の2006年報告[10]では、低線量におけるリスクを推定するための外挿に、線形二次モデルを直接用いているため、線量・線量率効果係数は適用しなかった。

訳者コメント

UNSCEARの2010年報告書の抜粋翻訳です。

以上を読んだ上で、UNSCEARを<サイエンス>と語る長瀧氏と児玉達彦氏の「第4回低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」でのやりとりを見ると、長瀧氏が、実は、UNSCEARの報告を科学的と言いながら、恣意的に都合のよいところしか取り上げていないのではないかとの疑いが生まれます。

2012-03-01 17:59:55 / eengine
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[ 原文 ] http://www.unscear.org/docs/reports/2010/UNSCEAR_2010_Report_M.pdf
国連関係公式文書。