東電福島第一原発事故の帰結:人間以外の生物種に対する放射線の生物学的影響

法律: 放射線 原発事故 東京電力福島第一原発 論文抄録

東京電力福島第一原発が2011年3月にメルトダウン事故を起こしてから3年が経過した。25年前の1986年4月、同じく国際原子力事象評価尺度でレベル7の悲劇的な事故がウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で発生した。チェルノブイリ事故後、生物学者が生物学のために標本とデータを収集することができるようになったのは、かなりの時間を経た後のことであった。生物学的研究の開始が遅れたために、電離放射線が生態系と住民に及ぼす影響に関する重要な情報が失われてしまった。同様の問題を繰り返さないよう、日本の生物学者たちは、国際社会の同僚の協力のもとで、2011年夏から福島における原発事故の影響調査を開始した。原発近くの地域に放出された大量の電離放射線は、生態系に大規模な不可逆的変化を起こし、住民の健康に深刻な悪影響を与える恐れがある。原発事故のリスクを理解し、その帰結を量的に捉えることは世界的な関心事項である。

本特集では、チェルノブイリと福島の人間以外の生物種に関するデータを比較し遺伝学研究上の課題の一部を検討する。ここで紹介する現在進行中の研究の目的は、電離放射線の一般的な生物学的影響をさらに研究するための方略を確定すること、また、異なる線量に対応する長期的な遺伝的影響を理解することにある。Journal of Heredityで組む最初の特集である今回は、異なる3分類群を扱う。すなわち、米類、蝶、鳥類である。

本特集に寄稿した著者によるものも含む、チェルノブイリと福島における野生生物の遺伝学的研究及び生態系に関するこれまでの研究では (Otaki 2011; Hiyama et al. 2012, 2013; Iwata et al. 2013; Møller et al. 2012a, 2012b; Møller and Mousseau 2013a, 2013b; Endo et al. 2014; Møller et al. 2014; Mousseau et al. 2014; Nohara et al. 2014)、電離放射線への暴露がもたらす有意な遺伝的、生理的、発達的、適応的な影響が示されている。福島とチェルノブイリの調査は、電離放射線の研究の時間的展開を示す重要なベースラインとなる。というのも、生物学的影響の一部は、何年もあるいは何世代もあとになって現れる可能性があるからである。電離放射線に対する感度は生物の群によってかなりのばらつきがあることが報告されている。これは、各群の行動の相違、進化歴と遺伝的背景を反映している。ここで報告される研究で支配的な仮説は、電離放射線への慢性被曝は、個体における身体細胞系列においても生殖細胞系列においても遺伝子を損傷し、突然変異率を高めるのではないかというものである。ハーマン・J・マラーはすでに1927年以来、電離放射線が遺伝子損傷を引き起こすこと、そしてそれによる変異の大多数が有害である可能性が高いことを指摘している(Muller 1927)。しかしながら、今日に至るまで、我々は、野生生物の個体に電離放射線被曝がどのような影響を与えるのか、しきい値はあるのかについて十分に理解しているわけではない。本特集における3論文が、人間以外の生物種に対する放射線の生物学的影響及び生態的影響に対する研究の足がかりとなれば幸いである。

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【特集のイントロ相当のものです。3つの論文については順次、抄録を紹介していきたいと考えています。本誌はオープンアクセスジャーナルでCCライセンスで再利用・再掲など可。】

2014-08-29 09:12:54 / eengine
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[ 原文 ] http://jhered.oxfordjournals.org/content/105/5/702.full
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