中東と北アフリカでのデジタルセキュリティとデジタル権利アドボカシーの状態とは?

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中東と北アフリカでのデジタルセキュリティとデジタル権利アドボカシーの状態とは?

APC

2016年5月24日

【画像のキャプション】出典:Global Voices Advocacy

2011年の「アラブの春」の間、インターネットは動員のための空間だった。それ以来、そこは行動主義と異議の表明を抑圧するための空間にもなり、中東と北アフリカ(MENA, Maghreb-Machrek in Arabic)の数多くの国の政府はオンラインの言論を弾圧するために法律の採択や改定を行い、知識生産に対する権威を奪回し、反対勢力を減ずるために、検閲と監視を展開している。ますます迫害が高度化しているにもかかわらず、人権を守る活動はオンラインもオフラインも途絶えることはない。

これがMENA地域でAPCが取り組んでいることの背景にあるものであり、Maghreb-Machrek地域のオンラインの人権とデジタルセキュリティの文化を確立するプロジェクトを通して、草の根レベルでデジタルセキュリティを構築し、表現の自由と団体・結社の自由、インターネットへのアクセスに影響を与える法律および政策、規制の枠組みを改善するための試みである。そのプロジェクトは人権とデジタルセキュリティへの脅威と挑戦およびそれらを架橋する方法について、より良く理解するために役立つ一連の研究である。

アラブ世界におけるデジタル権利アドボカシーと普遍的・定期的審査

その地域は非常に多様であり、デジタル環境における人権の保障に関するアラブ世界各地での試みは国ごとに非常に異なっている。Wafa Ben Hassine研究員はアラブ世界におけるデジタル権利アドボカシーと普遍的・定期的審査の文書においてそう結論づけ、そこでは、Maghreb and Machrek地域の地域団体がインターネット関連の権利アドボカシーに関与する方法と、普遍的・定期的審査(UPR)の過程でこれらの問題を含めるとき、それがどの程度反映されているかに焦点が合わせられている。

UPRは人権に関する合意点を提供しようとしており、アラブの非営利はしばしばその過程に参加しているが、デジタル権利はその検討課題の外にほとんどが残されたままである。デジタル保護とインターネット上の一般的な人権は比較的目新しいものであり、とりわけアラブ世界ではそうである。

地域全体で、デジタル権利を求める市民社会運動の多くは、幾人かの個人の行為者と少数の組織に分散していると報告書は結論付ける。政府はでっち上げた犯罪事実でオンラインの活動家たちを逮捕する傾向を依然として保っており、独裁者ベン・アリが倒れてから何年も経っていてもなおデジタル権利活動家たちが警察による執拗な嫌がらせを受けているチュニジアなどがそうである。同時に、地元の非営利はブログやソーシャルメディアのキャンペーンの構築、オンラインの行動主義を後押しするイベントを定期的に開催している。

調査された国々に共通のテーマは、立ち上げられたキャンペーンがどれほど効果的になりうるかを決定する政治体制の現実である。「アドボカシーの潜在的効果は政治的制約によって限定され、それが関与している市民の管理下にあることはめったにない」。ある国々ではキャンペーンが始められた外部環境がデジタル権利活動の助けとならなかった----とりわけシリアやイエメン、リビアのような戦争で疲弊した国々において。デジタル権利活動にとってより助けとなる環境を備えたアラブの国々----例えばヨルダンなど、ある程度はチュニジアも----は活動の調整とUPRのメカニズムについてCSOsを教育するのに費やす資源に関して課題に直面している。

デジタルセキュリティの置かれている背景:アラブ世界におけるデジタルセキュリティ訓練と人権の現実に関する見方

その地域でますます増加する人権侵害は、スノーデンによる暴露後の通信の不確実性に関する国際的な認識と相まって、多くの人権組織にデジタルセキュリティ支援の対策に活動の焦点を再び合わせさせることとなった。ここ数年、アラブ地域中で多数の訓練やワークショップ、相談が開催されてきており、標的となった集団に対して、その活動を弱体化させうる政府やその他の団体によって引き起こされるデジタルの脅威から自らを守る方法について助言をしている。だが、現場では、これらの取り組みはどれほど有効なのだろうか?

この問題はReem Almasri研究員による文書「デジタルセキュリティの置かれている背景:アラブ世界におけるデジタルセキュリティ訓練と人権の現実に関する見方」の中で取り組まれた。その報告書は、彼らが派遣された国々の人権と基盤の現実にデジタルセキュリティプログラムがどの程度対応しているかを調査している。著者はモロッコとパレスチナ、エジプトのデジタルセキュリティ訓練者と主唱者にインタビューを行った。彼らの見解はデジタルセキュリティ訓練をより効果的にするための4つの主要な推奨原則を提供する。

・背景調査は国レベルだけでなく、対象集団のレベルでも、多様な人権の現実に取り組むべきである。

これに関連してインタビュー対象者は、デジタルセキュリティに関する助言を提供する前に、その国の立法的な現実と監視の実態について理解しておくことの重要性を強調した。例えば、許可のない暗号化はどのような形であれ禁じられているエジプトのような国では、選択は目に見える暗号化と見えにくい暗号化の間でなされる必要があり、「とりわけ空港当局で検査される危険性のある機器の場合はそうである」と訓練者の一人は指摘する。

デジタルセキュリティへの危険を評価し、ツールや実践を勧めるときには、その国のインターネット基盤の配置を考慮に入れることが重要である。

この点は、調査の一端として事例研究の対象として選ばれた国々の一つである、占領されたパレスチナに特に関連して見られた。イスラエルの通信網に強く依存していることを考えるなら、はたしてガザの人々は自らの電話やインターネット接続を使って安全に通信を行うことができるのだろうか?

・デジタルセキュリティの訓練と手引書はツール中心というよりも行動中心であるべきである。

セキュリティの助言は、活動家たちの行動と特定のプラットフォームに対する彼らの想定を考慮に入れなければならない。訓練者の一人は主な通信方法としてSMSを使っているNGOの例をあげた。「彼らのSMSはいくつかの言葉によって調整されフィルターにかけられているということがわかりました。この状況でTextSecureのようなツールを勧めることは、この集団へ注意を引くことになります」。新たなツールを導入する代わりに、迫害や注目を集めることを避けるために同じ媒体を使いながら、マニュアルで決められた暗号化されたテキストの使用を提案した。

別の訓練者は公共の無線サービスを通してインターネットにアクセスするというよくある行為に言及した。「世界中の安全なアプリケーションを提案することができるかもしれませんが、公衆通信回線を通して使うのなら、どうにもなりません」と彼は強調する。

・出版よりも前に、デジタルセキュリティの手引書に対して技術的およびセキュリティリスクの審査を課すことが必要である。

インタビューの対象となった訓練者たちはいくつかの指導書やツールキットによって使われているデジタルセキュリティに対する「画一的な」ツール中心のアプローチにとりわけ批判的であり、また、これらがときに作り出す絶対的な安全という感覚もまた批判している。インタビュー対象者の一人が明確に述べたように「暗号化は拷問を無効にするわけではない」。

より詳しい話を知りたい場合は、報告書、もしくは私たちのプロジェクトページをご覧ください。

 

 2016-06-11 23:20:21 / shikimi
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[ 原文 ] http://www.apc.org/en/news/what-state-digital-security-and-digital-rights-adv
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