世界の有角神 (Horned deity) wikipedia翻訳

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 この記事では世界中の有角神(角が生えた神・Horned deity)を紹介しています。ネオペイガニズムの有角神においては、Horned god のページで詳しく述べられています。

 

  (写真1)「パン」 パンが気に入りの少年、羊飼いのダフニスに、パイプの吹き方を教えている場面を描いた石像。紀元前100年ごろのギリシャの像を、2世紀ごろにローマで模倣したもの。ポンペイにて発見。

 
 「神」とよばれる存在が、頭に角をはやした状態で描かれることは、さまざまな地域、さまざまな宗教で、見受けられることである。



  目次

 1 女神ハトホル 2 牛神信仰 3 古代エジプトでの羊神信仰 4 アモン信仰 5 ヨーロッパ大陸での有角神 5.1 ヨーロッパ 5.2 アフリカ 5.3 中東、西アジア 6 聖書における「角」 7 悪魔信仰への影響 7.1 キリスト教の悪魔信仰 7.2 バフォメット 7.3 ネオペイガニズムにおける悪魔信仰 7.4 魔女宗における解釈 7.5 ベルゼブブ 8 ネオペイガニズム 9 関連項目 10 参考資料 11 原文サイト/PDF/拍手
 





1 女神ハトホル     (原文1

 主な出典:Hathor

  (写真2)レリーフのアップ写真。メカウラ王が女神ハトホルに抱かれている像が描かれている。

  ハトホルは、よく頭から牛の角をはやした状態で描かれる。角と角の間に蛇(ウラエウス)が巻き付いた太陽円盤をはめているところが特徴的である。2本の羽は、その後の時代も吉兆の印として見受けられる。
 ハトホルは、『ナルメル王のパレット』に見られるように、エジプト王朝初期ごろにはすでに信仰されていたと考えられる。

 エジプト第1王朝の日付がなされた石壺によると、ハトホルは「空の神」ということになっており、太陽神であるホルスは彼女の中に「入っていた」という。つまり彼らは、親戚や親子のような間柄だと考えられている。

主な出典:Hathor § Relationships, associations, images and symbols

  また、ハトホルはラーとも親子のような間柄として描かれることが多い。
 ある神話によると、彼女は彼の「目」だったそうだ。その時は、彼の「娘」として扱われていた。
 だが、ホルスがラーに王の立場を代わられてからは、彼女はラーの「母親」として扱われるようになったという。

 彼女は牛の女神「Mht wrt」(意味:大洪水)と習合された。ラーの母親というところと、牛の角が有るというところが共通している。
 ラーの母親(つまり空)は、毎朝東の地平線からラー(太陽)を産み出し、毎日彼の子を孕んで、次の日再びラー(太陽)を産み出す、と言い伝えられた。
 

主な出典: バト

 バトはエジプト神話に出てくる牛の女神である。人の顔を持ち、耳と角が牛のものである。エジプト王朝中期にハトホルに習合されたと考えられる。バトの信仰そのものは、エジプト王朝初期から存在した。

 おそらく、その起源は旧石器時代後期の牛飼いたちの伝説にあると思われる。7世紀頃のナイル川の上流方面の地区、セシェシュ(別名フー、あるいはディオスポリス・パルヴァ)で、バトは位の高い女神であった。神聖な牛の女神というところが、ハトホルとよく似ている。

 注目された違いは、バトは角が内側に折れ曲がっており、対してハトホルは外側に折れ曲がっていた点である。そこから、エジプト王朝初期に飼われていた牛と、中期に飼われていた牛とでは、品種が違うという説が立てられている。

 

2 牛神信仰     (原文2)

 

 主な出典: Bull (mythology) § Egypt

  エジプトには、「アピス」という牛の伝説があった。アピスはプタハ神(後の時代ではオシリス)の化身とされる。神官に神聖であると認められた牛が、神殿の中で死ぬまで飼われ続け、その死体をミイラにして大きな石棺に収める、という長い儀式があったと考えられる。1851年にオギュスト・マリエットが発掘した、サッカラのセラペウム神殿に、大きな一枚岩でできた棺があった。
 また、後述のムネヴィスという牛はヘリオポリス九柱神のアトム神と同じ板に描かれていたこともあり、エジプトの人々は、牛の生命力と力強さにあやかりたかったと思われる。

主な出典: Mnevis

 ムネヴィスはたいてい生きている牛として描かれるが、おそらく1つの王の治世が終わると生贄としてささげられたものと思われる。
 王がバトあるいはハトホル(牛の女神)の息子ということにされていたからかもしれない。
 太陽神がラーに変わってからの時代も、ムネヴィスはたびたび描かれた。そのなかでは、ムネヴィスもハトホルと同様に、角の間に太陽円盤をはめていた。

  (写真3)角のはえたイシス

 主な出典:Bull (mythology) § Levant

  聖書によると、カナン人にはモロクという神がいて、牛の姿で描かれている。しかし、それは後の時代にアブラハムの宗教で悪魔ということにされた。
 牛の神はユダヤ・キリスト教の文化圏でもよく知られている。聖書の出エジプト記に、アーロンによって作られた金の子牛の像の話がでてくる。金の子牛はシナイから追放されたヘブライ人が信仰していたとされる。
 イスラエル聖書の文面からして、牛の神はイスラエルの神ではないものとされており、これはエジプト人やレバント人の牛の神を思わせる描写である。
 

 出エジプト記 32:4 アロンがこれを彼らの手から受け取り、工具で型を造り、鋳て子牛としたので、彼らは言った、「イスラエルよ、これはあなたをエジプトの国から導きのぼったあなたの神である」。

 ネヘミヤ記 9:18 また彼らがみずから一つの鋳物の子牛を造って、『これはあなたがたをエジプトから導き上ったあなたがたの神である』と言って、大いに汚し事を行った時にも、

  牛の偶像は、タナハのホセア書にも登場する。牛は東どなりの文化の象徴として描かれている。

  列王記(上) 7:25 にも鋳物の雄牛の像が12体登場する。

列王記(上) 7:25 その海は十二の牛の上に置かれ、その三つは北に向かい、三つは西に向かい、三つは南に向かい、三つは東に向かっていた。海はその上に置かれ、牛のうしろは皆内に向かっていた。

  雄牛の像はイスラエル王国の国境のしるしとして、テル・ダンベテル(地名)に置かれたといわれる。


 

3 古代エジプトでの羊神信仰     (原文3)

 

  (写真4)バ・ネブ・デデト


   古代エジプトには、羊の神もいた。豊穣と戦を司るといわれた。ナイル川の下流では、長くうねった羊の角をはやした神クヌムや同じような特徴を持った神が信仰されていた。中でもバ・ネブ・デデトは「羊の中の羊」といわれている。頭に4つの羊の頭を載せていて、それに4つの太陽神の魂が入っている。 [1] バ・ネブ・デデトの頭部にあるのは、おそらく、エジプトを最初に治めたといわれるオシリス、ゲブ、シュー、アトムの4神のことではないかと思われる。この4柱はメンデスの巨大な花崗岩でできた聖堂に祀られていた。The Book of the Heavenly Cowによると、「メンデスの羊」というのは、オシリスの魂ということになっているのだが、バ・ネブ・デデトの伝説と比べてみても矛盾はしない。
 

 

 エジプトの主な羊神:

 ・ クヌム(Khnum) - 古代エジプトの神の一つ
 ・ ヘリシェフ(Heryshaf) - ヘラクレオポリスの羊神
 ・ ケーティ(Kherty) - のちにアケン(Aken)とも呼ばれた。エジプトの神話では位の高い神である。
 ・ アンジェティ(Andjety) - オシリスのもとになった神と思われる。
 ・ ホレム・アケト(Horem Akhet) - スフィンクスと同じもの。頭部が人だったり、ライオンだったり、羊の場合もある。
 ・ バ・ネブ・デデト - 羊の神で、4つのエジプト神、オシリス、ゲブ、シュー、アトムとつながっている。
 ・アメン(Amun) - のちのアモンの元になった羊神
 


4 アモン信仰     (原文4

 

主な出典: Amun § Cult in Nubia, Libya, and Greece

  (写真5)粘土に描かれたアモン。頭から羊の角がはえている。1世紀の作品。(ローマ、ブラッコ美術館収蔵)

  アモン信仰は、古代ギリシャに流入した。伝説によると、キュレネは賢人アモンがオアシスの周りに造りあげた街だという。
 テーベのピンダロスは著書に、アモンの神殿や建造物のことを記している。 [2]
 他にも、スパルタのパウサニアスは、昔、リビアの賢人アモンはギリシャの人々にさまざまなことを教えたと記した。 [3] 
 カルキディケ半島の都市アピティスでも、アモンは信仰された。将軍リュサンドロスはアモンを熱心に信仰していたという。
 ピンダロスはアモンに捧げる賛美歌を作った。
 メガロポリスでも神は頭が羊だったという(Paus. viii.32 § 1)。
 ギリシャのキレナイカでは、アモンの像がつけらた戦車をデルフォイに贈った。
 

  アモンはそれだけ古代ギリシャでの名声は高かったため、アレクサンドロス3世(大王)はイッソスの戦いでエジプトを占領した際に、自分をアモンの子孫だとした。それ以降、アレクサンドロス3世は聖職者でもあるとみなされた。アモンは後の時代に、ゼウスと同一視されるようになったが、テーベ周辺では位の高い神でありつづけた。

 主な出典: Berber mythology § Before the battle of Irassa (570 BC)

  キレナイカでは彼らもともとの神であるゼウスの神殿の代わりに、もともとはリビア人の神であるアモンの神殿が建立された。彼らは最高神ゼウスは、リビアのアモンと同じものとみなしたと思われる。 [5] アモン信仰はアレクサンドロス3世の宣言によってギリシャじゅうに広まることになった。それは彼がゼウスの子孫であると宣言したのに等しいことだった。彼はシワ・オアシスの神殿でリビア人の司祭にアモンの子孫であると認証された。

 (写真6)羊の像が並ぶアモン神殿入り口

 主な出典: Berber mythology § Amun as a common deity

  アモンの起源はバルバロイにあるという説もあるが、それは証拠不十分である。だが、アモンはバルバロイ神話で最も偉い神であったことには違いない。 [7] アモンはキュレナイカで崇拝され、やがてリビア人の影響で、フェニキア人、カルタゴ人の神、バアル・ハモンと同一視されていった。 [8] 北アフリカから始まった羊神が詩歌などに登場するのは、おもに紀元前9600年から、紀元前7500年ごろまである。古代リビアにおいて、最も名高いアモン神殿はシワ・オアシスの神殿である。[9]

 主な出典: Berber mythology § Solar and lunar worship

  トワレグ語では、アマナイ(Amanai)というのが、「神」にあたる単語である。古代リビアの太陽神、アモンが由来であると考えられる。

 主な出典:Baʿal § Baʿal of Carthage

  カルタゴと北アフリカでは、バアル・ハモンは羊に関連付けられ、「バアル・カーナイム(二つ角の神様)」としても崇拝された。カルタゴの対岸には、「ジュベル・ブ・コーネイン(二つ角の丘)」と呼ばれる屋外の聖域があった。

 主な出典:Alexander the Great in the Qur'an § The two-horned one

  (写真7)古代ギリシャの銀貨。アレクサンドロス3世(大王)の命で発行された。銀貨には角をはやしたアレクサンドロスの肖像画が描かれている。

  エジプトのアメンは頭から羊の角がはえている。羊は子孫繁栄のシンボルであり、角をつけることは生殖能力があることをしめすことだった。やがてその風習はエジプトから東西に広まり、アモンの代名詞は「二つの角」になっていった。
 アレクサンドロス3世は紀元前332年にエジプトを征服してからというもの、肖像画に角が描き足されるようになり、聖職者からもアモンの子孫として認められた。アモンは古代ギリシャで、神々の王であるゼウスと同一視され、ギリシャ神話にも大きく影響を与えた。
 5人の歴史家(アッリアノス、クルティウス、ディオドロス、ユスティヌス、プルタルコス)が著した書によると、アレクサンドロスはリビア砂漠のシワでアモンの信託を受けたとされる。アレクサンドロスがアモンの子孫であるという話は、彼の父親がフィリップであることよりも有名であったという。 [11] [12] [13]これにより、アレクサンドロスは自らの権力が神託であることを誇示できた。

  彼が神聖であるということは、周辺地域の人々も受け入れざるを得なかったようだが、皮肉にもスパルタ人は彼のことをこう記した。「アレクサンドロス大王は神になりたくてしょうがなくて、なったのだ」と。 [14]

 

5 その他地域での有角神     (原文5)


  5.1 ヨーロッパ

   (写真8)「船乗りの柱」に描かれたケルヌンノス

  「パン」という、羊と羊飼いの神がいる。パンは単純な音楽を楽しみながら、山の荒れ地に住まうという。

  ケルト神話には「ケルヌンノス」という神がいる。頭から鹿の角をはやしている。ラテン語では「一本角」と呼ばれた。パリの「船乗りの柱」に描かれているそれは、ローマ神話の「ユピテル」のような姿をしている。 [15]

  コシディウスという神は時折角がはえている姿が描かれている。コシディウスは、ロマノ・ブリティッシュの戦の神でハドリアヌスの長城の周辺地域で信仰されていた。 [16] 彼はおもに軍人や一般庶民を中心に信仰された。 [17]

   (写真9)「グンデストルップの大釜」に描かれた、角がはえた人間

  18世紀のオカルティスト、エリファス・レヴィはバフォメットの偽史を信仰した。偽史によると、バフォメットはローマのカトリック教会で異端のテンプル騎士団から崇拝されていたという。偽史には他にも「リビアの有角神(アモンのこと)」や「メンデスの”山羊”」が登場する。 [18]

 主な出典: Gundestrup Cauldron § Origins

  グンデストルップの大釜がケルトの信仰においてどのような意味を持っていたかについては研究者たちによって長年研究されてきた。そこ(その部分はプレートAとよばれている)に描かれている、枝分かれした角をはやした人物は、ケルヌンノスではないかというのが通説だ。


  5.2 アフリカ

  (図)イボ人のイケンガ      [原文サイトでご確認ください]

  名も無き羊の神々が、シワ近辺のリビア人によって信仰されていたこともある。これらはやがてエジプトの神、アメンに集合されていった。これはちょうど、「ギリシャ語への翻訳」のように、ギリシャのゼウスがアモンに変わっていったようなことである。 [19]

  ナイジェリア南東部に居住するイボ人には、古くからの信仰で、オディナニというものがある。そのなかの「イケンガ」という神には角がはえている。2本の角は「自分の願い」の象徴である。彼はよく小さな木彫の像として個人の家の祭壇に祀られている。 [20]


  5.3 中東、西アジア 

  (写真10)インダスの神パシュパティ

  パシュパティは、パキスタンのモヘンジョ=ダロ遺跡から発掘された、印判に描かれていた。「シヴァ神」の原型ではないかという説がある。 [21] 「パシュパティ(Pashupati)」とは、サンスクリット語で「動物の長」を意味する「paśupati」のことと思われる。[22] その印判に描かれたパシュパティは頭から角をはやし、股間には勃起を思わせる表現がある。彼のまわりにはたくさんの動物たち描かれている。

  古代インドの聖典リグ・ヴェーダには、家畜の守り神として「プーシャン」という神が登場する。これがパシュパティに関連したもののようである。パシュパティナートと呼ばれる寺院があるが、そこはネパールヒンドゥーのみならず、ヒンドゥー教徒にとっての聖地とされている。

  ベーダ聖典に登場する火の神、「アグニ」も時折角がはえた姿で描かれることがある。

 

6 聖書における「角」     (原文6)

  カナン人の神であるバアルや、ヤーウェの名前のもとになった、エールという神も、もともとは角がはえた神だった可能性がある。 [24] :15 [25] :28

  (写真11)「稲妻とバアル」 紀元前15〜13世紀。ラス・シャムラで発見された石碑。ラス・シャムラはシリア王国の前身である、ウガリットの都市。

  (写真12)Kuntillet Ajrudで発見された陶器のかけらに描かれたヤーウェの写し。


  詩篇 75:10 [26]「悪しき者の角はことごとく切り離されるが正しい者の角はあげられるであろう。」

  申命記 33:17 [27]「 彼の牛のういごは威厳があり、その角は野牛の角のよう、これをもって国々の民をことごとく突き倒し、地のはてにまで及ぶ。このような者はエフライムに幾万とあり、またこのような者はマナセに幾千とある。」

  黙示録 13:11 [28] 「わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た。それには小羊のような角が二つあって、龍のように物を言った。」

  レビ記 4:7 [29]「祭司はまたその血を取り、主の前で会見の幕屋の中にある香ばしい薫香の祭壇の角に、それを塗らなければならない。その子牛の血の残りはことごとく会見の幕屋の入口にある燔祭の祭壇のもとに注がなければならない。 」

  「出エジプト記」にモーセに角がはえている描写が見受けられる場合がある。

 ウルガタ聖書では、モーセが十戒を賜って人々に見せに行った際の場面で、彼の顔には "cornuta" (=角がはえて) いた。
 さらに、ウルガタ聖書を翻訳したドゥアイ・リームズ聖書でも、「モーセはシナイ山から降りてきた。その手には十戒が記された2枚の石版があった。そして、彼の顔からは、君主の証である角がはえていた。」 [30]

 

7 悪魔信仰への影響     (原文7)

 関連項目: Azazel

  (写真13)パンと山羊の像     [原文サイトでご確認ください]


  7.1 キリスト教の悪魔信仰

 主な出典: Christian demonology § Appearance

  「悪魔」が角をはやした姿で描かれるようになったのは、黙示録13章からとみられる。この書物に角がはえた悪魔の描写が使われてから、たくさんの書物がこれにならって典型的な「悪魔」の姿を造りあげていった。もちろん、この描写はモロクやシェードゥーなどの、古代の神からとったものである。それらは牛や、人体に牛の頭部をつけた姿や、頭から角をはやした姿で描かれていた。


  7.2 バフォメット

  悪魔信仰に見られる、「角がはえた神」で有名なのは、バフォメットだろう。バフォメットはメンデスの羊をモデルとしている。(前述の通り、メンデスの羊はバ・ネブ・デデトと呼ばれ、オシリスの魂とされた。)
 ジェラルディン・ハリスが著した、「エジプト神話」では古代エジプトの神々の解説が記されている。それによると、羊神アメン(詳細:アモン信仰)やバ・ネブ・デデトは、エジプトの女王とその後継者の象徴を習合ものだそうだ。メンデスのテーベ神殿にそのような表現が見られる、という。
 

  オカルティストのエリファス・レヴィは、1855年の著書『高等魔術の教理と儀式』でマルセイユタロットの「悪魔」のモデルは「 ”山羊神” バ・ネブ・デデト」だとし、バ・ネブ・デデトの呼び名も「メンデスの山羊」あるいは「メンデスのバフォメット」とした。
  この表現は、ヘロドトスの『歴史』第2巻の引用だとしているが、これは完全な誤りである。ヘロドトスは「『メンデスの神』は山羊である」と記したが、同じ本に「バ・ネブ・デデトは羊である」と記してある。決して、「バ・ネブ・デデトは山羊である」とは記していない。

  (写真14)ライダー・ウェイト版タロットの「悪魔」

 主な出典: Baphomet § Aleister Crowley

  バフォメットはレヴィの宗教観においてとても重要な位置を占めていた。この宗教観は、20世紀初頭のオカルティスト、アレイスター・クローリーによって流用された。バフォメットはEcclesia Gnostica Catholicの教典の上でも重要な存在で、ミサの時には次のような文句が唱えられる。「バフォメットの名において、偉大なる古き蛇と獅子、そして神秘という神秘を信じます。」(参照: Aleister Crowley: Occult)

 主な出典: Baphomet § As a demon

  レヴィが著したバフォメットの姿は、のちに、ライダー・ウェイトタロットの図案の元になった。ライダー版タロットの「悪魔」は、頭頂部に逆さまの五芒星をのせている。レヴィは「メンデスの山羊」は頭に逆さまの五芒星を載せているのだと説明していおり、それをそのまま図案化したものである。レヴィはこの逆さ五芒星はmicrocosmic manの向きを逆にしたものとした。

  だが、実際に逆さまの五芒星とバフォメットのイメージがつながるようになったのは、1897年の『La Clef de la Magie Noire』でスタニスラス・ド・ガイタが描いたシンボルからで、これはのちに悪魔教会の公式シンボルマークになった。今でも、サタニストの間でよく使われている。


  7.3 ネオペイガニズムにおける悪魔信仰

 主な出典: Devil § Neopaganism

  (写真15)フランシスコ・デ・ゴヤ作『魔女のサバト』(1789年) 魔女たちと悪魔の姿が描かれている。魔女宗の教義は、キリスト教ではない、角がはえた神たちの物語をもとにしている。

  ネオペイガンのなかには、あからさまにサタンや凶悪な悪魔のことを崇拝している者たちもいるが、たいていのペイガン団体は、有角神を信仰している。たとえば、ウィッカの三相女神がその例である。それらの神々は、昔話や神話に登場するものもたびたびあって、ケルトのケルヌンノスや、パンなどがそれにあたる。
  しかし、昔話や神話に登場した神々もつい19世紀まで、キリスト教によって悪魔として扱われていたので、どちらも同じものを崇拝しているという見方もある。それでも、パンなどは悪魔として、文学や芸術で重要なキャラクターだった。 [31]

   (写真16)19世紀における悪魔山羊のイメージ     [原文サイトでご確認ください]
 


  7.4 魔女宗における解釈

 主な出典: Witch-cult hypothesis § Post-Murray

  1985年、古代ギリシア・ローマ研究家のジョージ・ラックは、論文Arcana Mundiで「ローマやギリシア世界の魔術や宗教が、現在の魔女宗のひな型になっている。『船乗りの柱』にみられるケルヌンノスや、ギリシアからローマのパンあるいはファヌスなどの古い神々と[32]、そこに彼らなりの新たな神々を加えて新たな神話を作り上げていった。彼らはあくまでキリスト教には回心せず、悪魔扱いされていた神々はキリストよりも古くからある神だと信じている。」と仮設づけた。そして、何よりも彼自身が魔女宗の人間である。[32]


    7.5 ベルゼブブ

 (写真17)角がはえた神?(古代エラム,紀元前300年~2800年ごろ)

 主な出典: Christian teaching about the Devil § New Testament

  サタンとベルゼブブにはあるつながりがあると指摘されている。(詳:『蠅の王』)もともと、セム人の神に「バアル」というものがいた。「君主、王」などという意味である。ベルゼブブは聖書でもかなり有名なほうの悪魔だが、その名の由来はサタンとよく似ている。オカルト作家で、メタフィジカル作家の、ミッシェル・ベランガーは、「ベルゼブブ」の名前は、もともとは牛神の「バアル・ハダド」から来ており、それを馬鹿にしようとしてつけられたものだという説を支持している。 [33][34]
  『The Encyclopedia of Witches, Witchcraft and Wicca』によると、ウィッチクラフトやウィッカでは、ベルゼブブは魔女のサバトを司るといわれており、宴会の時には、キリストの名前は挙げないのはもちろんのこと、「ベルゼブブ」と唱えながら踊る、という。 [36]

主な出典: Beezelbub § Later mythology

  ベルゼブブはマサチューセッツ州で起こった「セイラム魔女裁判」にもその名が繰り返し出てくる。セイラム裁判は北米およびヨーロッパで起こった最後の大規模魔女裁判である。これについて、コットン・マザーは『Of Beelzebub and his Plot 』というパンフレットを著した。

 

8 ネオペイガニズム     (原文8)

 主な出典: Horned God

  1933年、エジプト学者マーガレット・マリーは自身の著書『魔女の神』で、パンは明らかに、ヨーロッパじゅうの魔女宗から信仰されている有角神の一種であると主張した。 [38] この理論は、ネオペイガニズムの「男性の生殖能力と性的魅力を象徴する有角神」という考えに影響されている。ウィッカでは、有角神はとても重要な存在で、信者にとってはケルトのケルヌンノスや、インドのパシュパティ、ギリシャのパンの象徴であると信じられている。[要出典]

  ウィッカの有角神は、ネオペイガニズムの太陽神をもとにしている。その太陽神は、植物の成長を司る。とくに、彼らの儀式に関係する、ホーリーキング(柊の王)やオークキング(柏の王)に関することなので、重要視された。 [39] さらに、有角神は多産や子孫繁栄の象徴である。彼らにとって、「角」とは、古代エジプトからカナン人のバアル信仰、ギリシャ、ローマ、ケルト、そして数多の文化、文化圏にいたるまでの、古代のエネルギーに繋がるための象徴なのだ。 [41] [42] [43] そして、ギリシャ神話で凶兆とされた有角神を、キリスト教はさらにねじまげてサタンとして言い伝えたとしている。 [44]
 

  現代のネオペイガニズムのほとんどは、その信仰の対象を有角神に向けている。この神は1つでもありうるし、複数でもありうる。彼らの神々は、パンやディオニソス、ケルヌンノス、グイン・アプ・ナド(ワイルドハントの首領といわれることもある)などに、彼ら独自の解釈をつけたものとなっている。 [45] [46] [47] [48]



9 関連項目

・Horned God 
・Bull (mythology)
・Deer in mythology
・ケルヌンノス
・悪魔


10 参考資料

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訳者による引用

聖書の訳
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列王記(上)7:25 ja.wikisource.org/wiki/%E5%88%97%E7%8E%8B%E7%B4%80%E4%B8%8A(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#7:25
詩篇75:10 ja.wikisource.org/wiki/%E8%A9%A9%E7%AF%87(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#75:10
申命記33:17 ja.wikisource.org/wiki/%E7%94%B3%E5%91%BD%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#33:17
黙示録13:11 ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E3%81%AE%E9%BB%99%E7%A4%BA%E9%8C%B2(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#13:11
レビ記4:7 ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%93%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#4:7








 

11 原文サイト/PDF/拍手2017-02-13 18:31:30 / Hnoss
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